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3Dキャラクターモーション作成ツールの新星「akeytsu」に(ちょっと)迫る ~その1:UI編Part1

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 さて、今回からいよいよakeytsuの紹介です。(タイトルが「その1」なのは、前回はプロローグとして「その0」だったからです。もちろん後悔してます。)

 akeytsuは機能面ではかなり割り切ったツールです。前回書いた通り、モデルの制作もできるMayaやBlenderとは異なりリギング(モデルに骨組みを入れる作業)とモーションの作成に特化しており、それらの機能も他に比べてシンプルです。ですから、既にMayaやBlenderを十分使いこなせている方や、PCとクルマは全部入りの最上位機種しか買う気がしない!みたいな人は、特にaketsuを使う必要はないかもしれません。

 しかし、akeytsuの特徴は機能を絞ったこととユニークなUIにより、シンプルで直感的な操作を可能にしたことにあります。私のように3DCG初心者で、Mayaは買えない、Blenderは難しくて挫折した…というような人なら、akeytsuは有力な選択肢となりえると思います。

 それでは、今回はaketsuのUIの中でも特徴的なものについて簡単に紹介します。

マウスのみで完結する視点操作

  あらゆる3DCGツールで、エディタ画面の視点*1を動かすことは基本中の基本です。その操作法はツールによって異なりますが、akeytsuの場合は次の通りです。

  • 回転左クリックしながらドラッグ
  • 平行移動マウスホイールをクリックしながらドラッグ
  • ズーム右クリックしながらドラッグ、またはマウスホイールを回す

 

  他のツールに慣れている人なら「あれっ?」と思うかもしれません。akeytsuでは視点を動かす際に、○○キーを押しながら…という操作はなく、すべてマウスだけで可能になっています。

 また、動画ではわかりにくいかもしれませんが、回転とズームは常にモデルの現在選択されている部位を中心に行われます(オプションで変更可能)。これは単一のモデルにポーズをつけていくという作業を考えると非常に理にかなっています。*2

 3Dソフト初心者はモデルをいじる以前にこの視点操作でつまづいてしまう場合も多いと思うのですが(私だけかな…)、akeytsuは操作が単純なため習得しやすい印象です。

 視点に縛られないオブジェクトの操作を可能にした「スピナー」

 シーン内のオブジェクトに移動/回転/拡縮を行う場合、様々な3DCGツールで用いられるのが「マニピュレーター」です。私が知る限りでもUnity、UE4、Maya、Blender、Shadeなどにこのマニピュレーター(名前はツールによって違うかも)が存在し、機能も見た目も大体同じです。akeytsuでも、このマニピュレーターは普通に採用されています。(下図はaketsu)

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 これだけ多くのツールに使われるからには、マニピュレーターは非常に直感的で優れたUIであることは間違いありませんが、一方で根本的な問題点が存在します。

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 例えば上図は、いずれも「スケボー兄ちゃんの関節のX軸を回転させて左膝を曲げようとしている」のですが、やりたいことは全く同じなのに、視点が異なるため赤矢印の方向、つまりマウスをドラッグする方向が変わってしまいます。実際にやってみると、特に2番目の図のような位置関係だと大変操作しにくいことがわかります。

 そのため、他のツールでは自分が操作しやすいように視点を変えることが頻繁に行われます。しかし、UIの操作のために視点が縛られるのは本末転倒で、肝心のイメージ通りのポージングがしにくくなってしまいます。

 そこでaketsuでは、「マニピュレーターを遠隔操作するリモコン」的な仕組みとして、「スピナー」という新しいUIが創造されています。 

 スピナーはこの記事の冒頭に掲載した円形のツールで、上の動画のようにモデルの部位を選択した上でスピナーのX軸/Y軸/Z軸に対応した色の部分を上下になぞる(要するにドラッグですが感覚的には"なぞる"がしっくりくる感じ)と、マニピュレーターを操作したのと同様の結果が得られます。これなら、モデルがどんな位置・角度であっても思い通りに操作することができてしまいます!*3

  さらにスピナーでは、この手の操作に不可欠な「移動/回転/拡縮のモード切替」「ローカル座標系とグローバル座標系の切替」など、他のツールならあちこちに散在しているような各種ボタンが円周を囲むようにレイアウトされていて非常に便利です*4。しかも、他の各種ウインドウと同様、画面の好きな場所に移動させることができるので作業の邪魔になりません。

  このように、スピナーは本当に画期的なUIだと思います*5。akeytsuのロゴマークはまさにこのスピナーを模していて、このUIがakeytsuのコンセプトを象徴する"顔"であることが伺えます。

…さて、まだ2つしか紹介していないのに少し長くなってしまいました。UIについてはもう少しあるので、続きは次回にしたいと思います!(って平日になっちゃったから次回いつになるだろう…)

*1:これを「ビューのカメラ」と呼ぶケースがよくありますが、UnityやUE4のようにシーン内に「オブジェクトとしてのカメラ」がある場合、個人的にはこの表現だと両者を混同して誤解を招く気がします。そのため私のブログではなるべくオブジェクトとしてのカメラを「カメラ」、ビューのカメラを「視点」と表現するようにします。まぁakeytsuについて説明する分にはどっちでもいいのですが。

*2:Unityでは回転操作について「注視点を中心とした視点の回転」と「注視点自体を動かすことによる視野の回転」があり、前者でキーボードを併用します。広いシーン内に多数のオブジェクトが存在するUnityでは、どう動作したら作業しやすいかは状況によって異なるため、これはこれで理にかなった仕様といえますが、慣れないうちはうまく操作できず対象が視界から外れた、なんてことも多いかと思います。

*3:実はUnityなど他のツールでも、プロパティ表示欄(Unityならインスペクタのtransformコンポーネント)の数値を直接入力でいじることで、マニピュレーターに触らずにオブジェクトを操作することは可能です。更にUnityの場合はその数値自体をマウスドラッグで増減できるので、やっていることはakeytsuと同じといえますが、実際に触ってみると操作感は全く異なります。

*4:なんとオプション設定ボタンまでここにあって、クリックするとスピナーの下からニュッとオプションメニューがせり出してきます。

*5:もちろん新しいUIには好みの問題が常にありますので、これが合わない人は従来通りマニピュレーターで操作することもできます。